



切り立った崖にかかる雲、立ち込める霧、滝飛沫、立ち上る湯気。
この地はかつてアイヌの人々に「カムイミンタラ」つまり、神々の遊ぶ庭と称された、神秘と自然が溶けあうサンクチュアリ。今から百年前、明治の詩人、大町桂月によって「層雲峡」と名付けられた大雪山麓にたたずむ温泉地。
原始の姿を思い起こさせる壮大な地形と、静けさを讃える黒い森、硫黄の香りが溶け出す大地の湯。北海道の野生が、この土地にはまだ残っています。
川の流れる音、鳥のさえずり、木々の手触り、深い霧。手付かずの自然に包まれ、移ろいゆく季節を近くに感じながら、その全てを手で、耳で、目で、肌で感じる時間は、何者でもない私という存在を包み込んでくれるのです。
大雪山の秘境
層雲峡温泉
古くからこの層雲峡の地で営まれてきた温泉宿「ホテル雲井」。少しずつ時間をかけて繕って続いてきた、こぢんまりとした宿です。
大きな温泉旅館ではないので、趣向を凝らしたおもてなしや贅を尽くしたお料理をご用意することはできないかもしれません。
ただ、深い北海道の大地の恵みをふんだんに使った素朴で味わい深いお料理と、濃厚な源泉掛け流しの硫黄泉と、こざっぱりした小さなお部屋で、大切なお客さまを心を込めて、愛を込めてお迎えいたします。
大雪山・黒岳の麓で、山小屋のように、湯治宿のように、悠々自適な夜をお楽しみください。
煙に巻かれた湯治宿





かつては五十以上の客室数があったホテル雲井。時代の流れとともに在り方を見直して、三十三室に絞りました。往年の趣を残して、全室畳敷きのこぢんまりとしたお部屋となっております。
決して豪華な設備があるわけではありませんが、その代わりに、こだわりの選書や、お休み前の薬草茶など、お部屋での滞在をより素敵に彩るおともをご用意しております。
旅の喧騒から離れ、静かな空間で自分の心と体を見つめ直すような滞在をお楽しみください。
お部屋のこと


かつては、北海道・十勝地方の開拓民が、農閑期に湯治に訪れていた層雲峡温泉。
北海道の大地の力強さを感じさせるホテル雲井の湯は、日本でも数少ない良質な源泉掛け流し百パーセントの単純硫黄温泉です。
アルカリ性に近い泉質で、肌触りが柔らかいことも特徴です。肌のごわつきやざらつきを軽減し、くすんだ肌を透明感のある肌へと導く「美人の湯」となっております。
また、肌への刺激が少なく、お子様や敏感肌の方でも安心して入浴していただけるほか、自律神経不安定症や不眠症、うつ状態など心の病にも効果があるとされています。
お湯のお話




雲井の裏にそびえるのは、黒岳をはじめとした大雪山系の雄大な山々。主峰・旭岳を中心に、二千メートル級の山が連峰に及び、南には十勝岳連峰、東に東大雪連峰を従えた、まさに北海道の屋根。
そんな大雪山国立公園は、氷河期の息吹を感じさせる温泉・滝・湖・湿原・動植物相があり、日本の中でも最も広い国立公園のひとつとしても認定されています。
ホテル雲井は、この幻想的で荘厳な層雲峡の景観と、森羅万象に抱かれる原始の北海道の姿を留めたこの土地の空気を、旅人たちが体感できるような、そんな宿を目指しています。
私たちホテル雲井の案内人の目線で、層雲峡や大雪山のご案内「雲井便り」を更新していきます。
雲井便り

人若し余に北海道の山水を問えば、
第一に大雪山を挙ぐべし。
次に層雲峡を挙ぐべし。
大雪山は頂上広くして、
お花畑の多き点に於いて、
層雲峡は両崖の高く且つ奇なる点に於いて、
いづれも天下無双。
大町桂月